秋が旬の果物、栗。
炊き込みご飯に人気の秋の味覚です。
たまに分からなくなるのですが、栗は果物です。ついでに苺は地面になる植物なので野菜です。
今回の和菓子は、銀座あけぼのの栗最中。

見た目は普通の最中ですが

中を開けてみると

ごろっとした大きな栗が丸々入っている、贅沢な最中です。見た目がとにかく贅沢です。

味よりもまず見た目が豪華なので、ちょっとした手土産にもおすすめです。

間違えて別の日に姫栗最中を買ったのですが

比べると栗の存在感が一目瞭然です。
これはこれで美味しいですし、中の味はほとんど変わらないので、最中を食べる分には姫栗最中で十分だと思いましたが。

折角なので、栗の歴史を少し。
前回は柿の歴史に少し触れましたが、栗は柿よりも歴史が長く、最も歴史の長い果樹といわれています。縄文時代の遺跡から栗が出てくるくらいですから、日本人の食と深い繋がりがあったことが容易に分かります。
栗はあく抜きしないでそのまま食べられるので、トチやドングリに比べて手間のかからない便利な食材でした。カチグリとして保存できますし、不作がないから救荒食物にもなりました。
カチグリとは、栗のみを干して臼で軽く搗き(つき)、殻と渋皮を取り除いたものです。勝栗とされ縁起がいいことから、出陣の時や勝利の祝いの席で食べられたそうです。また、正月に歯が堅牢であることを願って行われる歯固めの儀礼でも食されました。
時代が経つにつれ臼で搗かず、天日干しにすることで実と皮を剥がすように変わったようです。2週間ほど栗をそのまま天日干しにすると、振るとカラカラ鳴り皮が剥がせるようになります。天日干しと軽く炒る作業を数回繰り返すことでも、皮が剥がれるようになるそうです。
実は食用として重宝されましたが、樹は杭や橋、家屋の建材になりました。昔の生活には欠かせない果樹だったので、集落には栗の樹が植えられたのです。栗にはタンニンという苦味成分を含んだアクがあるので虫や菌を寄せ付けず、雨水がかかるような過酷な環境でも腐りにくい優れた建材です。そのため、湿気やシロアリの発生しやすい住宅の土台部分によく使われ、日本の住まいを支えてきました。古民家では水回りに栗の柱が使われていることもあります。また、線路では枕木に栗の木が使われていました。
栗は食用としても建材としても優れた果樹で、日本の文化と深い関わりのある果物なのです。
現在ではお菓子に使われる際は少し値段が高くなり、ハレの感覚を伴う菓子になっています。栗きんとん、羊羹、鹿の子、モンブラン、マロングラッセと、いずれもちょっと贅沢な感じになります。
栗と言えば、天津甘栗も有名です。ハレの感覚を伴うもので、ちょっと値段の高い栗というと、天津甘栗を思いつきます。これも歴史は長いのかと思いきや、天津甘栗は歴史が浅いものでした。お祭りや縁日で食べるイメージがあるので、江戸時代かそれよりも前に神社やお寺で参拝客に振る舞われたのかと思っていましたが、1910年に浅草の仲見世で中国人がお店を開いたのが最初とされています。明治43年です。シナグリという種類の中国の栗で、日本に古来からある栗とはタイプが違うものでした。
話が長くなりましたが、秋の味覚に関する小話でした。

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