東院堂
回廊の外の、東塔の横には東院堂がある。
鎌倉時代に再建された日本最古の禅を行うお堂で
享禄の兵火を免れた建物だ。
床が高くなっているのが特徴となる。
奈良時代では土間が普通だったが、鎌倉時代になると建物を湿気や水害から守るよう、床を高くできるようになる。
禅の影響を受けた造りとも言われている。
御本尊の観世音菩薩像は金堂の薬師如来像と、日光月光菩薩像とともに国宝に指定されている。
白鳳時代に作られたもので当時貴重だった銅で作られている。
※『宮大工と歩く奈良の古寺』より
四天王像を間近で観れたため、横から見て肩に顔の意匠があることに気づいた。
獅子の頭部を模様化した獅噛(しかみ)というもので、これまで知らなかったが調べてみると、四天王像には獅噛があるのが少なくなかった。
肩やお腹に見られるが、兜の目庇の上や鎧の肩、火鉢の脚などの装飾に用いられることもあるようだ。
※獅噛:「しかみ」と読む「しがみ」とも
東僧坊
薬師寺はいろいろなことが知れて好奇心が満たされるが、金堂・講堂の奥にある東僧坊も面白い。
二つ見どころがあり、一つは薬師如来像の台座のレプリカだ。
東西南北を護る青龍 白虎 玄武 朱雀の四神、「ししん」と読むそうだが、が彫られていて、その上にインドの神やギリシャの葡萄唐草(ぶどうからくさ)文様、ペルシャの蓮華文様が彫られている。
西洋とアジアの文化がシルクロードを渡って薬師寺に伝わったことが分かる。
他の寺院では見られない意匠を凝らしたもので、中段には中から窓をのぞくインドから伝わった裸の蕃人(ばんじん)と、柱を支える堅牢地神(けんろうぢしん)が描かれている。
※薬師寺HPより
※蕃人(ばんじん)はインドの鬼神の力神
堅牢地神は大地をつかさどる神、地天 (じてん)
台座の四神(ししん)像は不老長寿を求める神仙思想や、民俗信仰が融合した中国古来の道教の宇宙観を反映しており、仏教のなかに道教の思想が取り入れられていることが分かりそうる。
※『奈良の寺―世界遺産を歩く―』より
もう一つの見どころが樹齢2500年の巨大な台湾産のヒノキだ。
台湾では自然保護のため平成3年より檜の輸出を禁止しているが、平成5年に講堂を再建するために特別に寄進されたものだ。
輸出が禁止されるまで台湾のヒノキは、日本の神社寺院の再建・改修に使われ、日本の文化財は台湾の檜と深い関係がある。
以前紹介した東京の明治神宮の大鳥居も台湾から運ばれた檜が使われている。
西僧坊(特別公開)
2022年の3月に参拝した時は、特別公開で西僧坊を観ることができ、大変見ごたえがあった。
その時は金堂・講堂・三重塔との共通券で、玄奘三蔵院伽藍と食堂、西僧坊を拝観できた。
玄奘三蔵院伽藍は法相宗の開祖で、西遊記の三蔵法師のモデルである玄奘三蔵の遺骨の一部を納めたお堂で、與樂門の向かいにある。
玄奘(げんじょう)三蔵は7世紀中頃に活躍した唐の僧で、経典を求め27歳の時にインドへ17年に及ぶ旅をした。
写真はフリー素材。時間がなく参拝できなかった。
食堂では阿弥陀三尊浄土図を観ることができ、西僧坊では東塔の創建時の相輪を観ることができた。
1300年前の水煙を間近に観れたのは嬉しかった。
動画では見えづらいが、音楽を奏でる天女が彫られている。
東塔の美しさを表した有名な「凍れる音楽」という言葉は、この水煙から生まれたともいわれている。
ついでに、この言葉はフェノロサのものではないらしい。
法輪の水煙には三重塔を災いから守る祈りが込められており、9つの輪は永遠を表していることを解説で知れた。
間近で観るとその大きさに驚くが、法隆寺の五重塔の相輪が3トンの重さなので、薬師寺もそれに近い重さがあると思われる。
三重塔や五重塔は最上部の屋根が風に弱く、飛ばされることが多いので、相輪を重くして屋根をしっかり押さえている。
相輪を大きくすると雷が落ちる可能性が増えるので、雷の被害を免れ1300年も塔が現存しているのは奇跡に思える。
再訪した時は特別公開ではなかったが、機会があればご覧になるのがお勧めだ。
和釘も観れた。
コメント